ハイパーモビリティとは?動きすぎている関節をアジャストしてはいけない理由

動的触診

PSISに触れて動的触診をしていて、片側の仙腸関節がよく動くと感じたとします。

そこに痛みがある、と患者様もおっしゃる。

一般的に多くの場合、「痛みがある=アジャストメントしたくなる」場面です。

けれどその関節は、アジャストメントしてはいけない場所かもしれません。

今回は、ハイパーモビリティについてお話しします。

ハイパーモビリティとは

ハイパーモビリティとは、関節が本来の範囲を超えて動いてしまう、過剰な可動域のことです。

原因として、次のようなものが挙げられます。

・亜脱臼
・骨折
・関節包や靭帯が伸ばされすぎている状態
・関節を支える筋肉の弱化

そしてもうひとつ、臨床で最も多く出会うのが、補正によって起きるハイパーモビリティです。

先に結論をお伝えすると、ハイパーモビリティは、アジャストメントの対象ではありません。

フィクセーションとの違い

ハイパーモビリティと対になるのが、フィクセーション(可動域の制限)です。

フィクセーションは、関節の動きが制限されている状態です。

たとえば仙腸関節に浮腫があるとき。 あるいは、損傷した椎間板を修復するために代謝が高まっているとき。

こうした状態では、全体的な可動性が制限されます。

動かなくなっている場所と、動きすぎている場所。 動的触診は、この2つを見分けるための検査です。

片側が動かなくなると、反対側は動きすぎる

ここが、今回お伝えしたい一番大切なところです。

骨盤でサブラクセーションが起きて、片側の仙腸関節がフィクセーションになったとします。

すると反対側は、その分を補うために動き始めます。 これを補正作用(カンパンセーション)といいます。

補正している側の特徴は、過剰な可動性です。

つまり、こういうことが起こります。

サブラクセーションは、動かなくなっている側。 動きすぎている側は、それを補っている側。

動きが大きくて症状が目立つほうを原因だと思ってアジャストメントすると、 補正している側をさらに動かしてしまうことになります。

本当の原因である、動かなくなっている側はそのまま残ります。

腸骨の変位は、反対側と比べて決まる

もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。

腸骨のずれ(変位)は、それ単独で決まるものではありません。 反対側と比べたときに、どちらにずれているかで表すものです。

だから、片側がずれていれば、反対側の多くは逆向きにずれているように見えます。

見た目の左右差だけでは、どちらがサブラクセーションなのかは決められません。

だからこそ、左右の可動性をしっかり検査することが欠かせないのです。

初動での動的触診を身につける

動的触診には、2つの見方があります。

ひとつは、関節を動かしきった最後の範囲を確かめる、最終可動域の動的触診。

もうひとつは、動き始めの瞬間を確かめる、初動の動的触診です。

最終可動域まで動かすと、確かめたい仙腸関節以外の関節まで一緒に動いてしまいます。
骨の形が影響することも多く、正確に検査することが難しくなります。

さらに、ぎっくり腰のような強い痛みがある方は、そもそも最終可動域まで動かすことができません。

だからこそ、初動での動的触診を習得することが重要になります。

動き始めのわずかな違いを感じ取れるかどうか。 ここが、検査の精度を大きく左右します。

妊娠中の方への注意

妊娠中は、出産に向けて骨盤の靭帯がゆるんでいきます。

体が自然に、骨盤が動きやすい状態を作っているのです。

この時期は、アジャストメントの強さや幅に特に注意が必要です。 動きが大きいからといって、それが異常とは限りません。

体は、正しく補っている

補正作用を知ると、体の見え方が変わります。

動きすぎている関節は、体が失敗した結果ではありません。 動かなくなった場所をかばうために、体が選んだ正しい適応です。

カイロプラクティック哲学には、「自然は間違いを犯さない」という考え方があります。

補正は、まさにその表れです。

私たちの仕事は、体の働きを妨げているものを取り除くことです。 補っている場所に手を加えるのは、私たちの仕事ではありません。

体がそうしている理由を先に理解する。 理由がわかってから、手を加える場所を決める。

それが正しい流れと言えるでしょう。

明日の臨床で

片側の動きが大きいと感じたら、アジャストメントする前に、反対側の動きを確かめてください。

左右で確認することが非常に重要です。

反対側が動かなくなっていれば、そちらが本命の可能性が高いです。

そして次の来院のときに、動きすぎていた側がどう変わったかを確かめる。 そこが落ち着いていれば、あなたの見立ては正しかったということです。

シオカワスクールでは、初動での動的触診をはじめとした検査を、時間をかけて一つずつ身につけていきます。

関野 貴友

執筆者関野 貴友

1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。

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