治療院経営で数字を見る意味|院を見つめることから始まります【第1章 #1】

院を見つめることから始まります

院経営において、「数字を見なければいけないことは分かっている」と感じながらも、どこか後回しになっている先生は少なくないと思います。

毎日の臨床があり、患者様対応があり、スタッフとのやり取りがあります。

さらに、新患対応、既存患者様のフォロー、学び、発信、院内改善まで、目の前にはやるべきことが数多くあります。

そうした日々の中で、数字を見ることはどうしても“後回しにされやすい仕事”になりがちです。

けれど、数字を見ることは単なる「事務作業」なのでしょうか。

私はそうは思いません。

数字を見ることは、単なる管理ではありません。数字を見ることは、自分の院を見つめることです。

もっと言えば、今この院で何が起きているのかを、感覚ではなく事実として受け取る行為です。

そしてそれは、インサイドアウトの視点で院を見つめ直すことでもあります。

数字が苦手なのではなく、数字の意味づけがズレている

多くの先生が数字を苦手だと感じる理由は、計算が苦手だからではありません。

本当の理由は、数字を「評価されるもの」「責められるもの」「経営者としてできているかどうかを突きつけるもの」として捉えてしまっているからです。

だから、見たくなくなるのです。売上が低ければ嫌な気持ちになる。利益が少なければ不安になる。

離脱が多ければ落ち込み、新患数が少なければ、自分の努力そのものが否定されたように感じてしまう。

そうした感情が、数字から目を背けさせてしまいます。

けれど、数字は本来、あなたを責めるためにあるのではありません。数字は、気づかせるためにあるのです。

体調が悪いとき、私たちは体温や血圧や脈拍を見ます。それは自分を責めるためではありません。

今、体に何が起きているのかを知るためです。院経営も同じです。

売上、利益、LTV、CPA、稼働率、離脱率といった数字は、院に起きている状態を可視化するためのものです。

つまり数字とは、院の健康状態を示すバイタルサインなのです。

良い・悪いで終わらせない

数字を評価として受け取ると、思考はそこで止まります。

「今月は売上が下がった」という事実を、悪い結果として受け取った時点で、話は終わってしまいます。落ち込むか、誰かの責任を探すか。良い・悪いという二つの箱に入れた瞬間に、先へ進めなくなるのです。

同じ事実でも、「なぜ下がったのか」「どこが動いたのか」と問い直せば、話は続きます。人数なのか、単価なのか、続き方なのか。

その問い直しが、次の一手の入口になります。数字は、良し悪しを告げるものではなく、問いを立てるためのものです。

そう受け取れるようになると、思わしくない数字は、避けたいものではなくなります。

良い数字は「このままで大丈夫そうだ」としか教えてくれませんが、低い数字は、院のどこに無理がかかっているのかを教えてくれます。

低いこと自体が問題なのではなく、低いまま見えていないことのほうが、院にとっては重い状態です。

そしてもうひとつ。数字は、先生の人格を映したものではありません。売上が下がった月があっても、先生の力が落ちたわけではありません。

示しているのは、そのときの院の状態だけです。そこを分けておけると、数字を見る時間は、ずいぶん静かになります。

見えていない院は、整えようがない

私たちは臨床で、見えていないものを整えることはできません。

患者様がどこに問題を抱えているのか、どこに負担がかかり、どこに無理が生まれているのかを、検査し、観察し、反応を見ながら判断していきます。院経営も同じです。

たとえば、売上が思うように伸びないとします。その原因は一つではありません。新患数が足りないのかもしれないし、一人単価が低いのかもしれない。

平均リピート数が伸びていない可能性もありますし、離脱が多くて、実は新患を増やしてもそこから抜けてしまっているのかもしれません。

けれど、数字を見ていなければ、それは全部「なんとなく」のままです。

最近なんとなく暇だ、患者様はなんとなく来ている、売上がなんとなく不安定だ、頑張っているのに結果がなんとなく出ない。

この“なんとなく”が増えていくと、経営は不安定になります。なぜなら、問題が見えていない院は、正しく手を打つことができないからです。

数字は、院の神経の流れを教えてくれる

院は、ただの箱ではありません。そこには理念があり、人がいて、患者様との関係があり、導線があり、習慣があり、文化があります。

そのすべてが日々動いていて、その結果が数字として表れます。

だから数字とは、表面的な成績表ではありません。院の中でどこに流れがあり、どこで滞りが起きているのかを示すものです。

たとえば、売上を考えるときも、ただ「もっと売上を上げたい」で終わらせるのではなく、その中身を見る必要があります。

実際にマニュアルでも、売上は人数と一人単価、そして平均リピート数という構造で整理されています。

この視点を持つだけで、経営の見え方は大きく変わります。

人数が課題なら集客、単価が課題なら価値設計、リピートが課題なら継続導線やケア計画というように、問題の焦点が明確になっていきます。

問題は“売上が低いこと”そのものではなく、どこに構造上の詰まりがあるかということなのです。

これは臨床とよく似ています。痛みを消すことが目的ではなく、なぜその反応が起きているのかを見ていく。

経営も同じで、数字の奥にある院の構造を読み解く必要があります。

問題は外ではなく、院の構造の中にある

院経営では、うまくいかない理由を外に求めたくなることがあります。地域性が悪い、景気が悪い、競合が増えた、広告が当たらない、患者様の意識が低い。

もちろん、外部要因はあります。けれど、外部要因だけを見ていても、院は変わりません。

本当に見るべきなのは、その状況の中で、院の構造がどうなっているかです。

新患は来ているのに定着しないのか、定着しているのに単価が低いのか、利益が出ていないのは経費構造に原因があるのか、忙しいのに利益が残らないのは稼働と単価のバランスなのか。

こうしたことは、感覚では見えません。数字を見ることで初めて見えてきます。

つまり数字とは、「外が悪い」で終わらせないためのものです。数字を見れば、自分たちの院の中に改善できるポイントが見つかります。

それは厳しいことのようでいて、実は希望でもあります。なぜなら、外はすぐには変えられなくても、院の構造は変えられるからです。

数字を見ることは、院に責任を持つこと

数字を見ないまま経営することは、言い換えれば、自分の院で何が起きているかを曖昧なままにしてしまうことでもあります。

逆に、数字を見るということは、今の現実から目をそらさないことです。

良い月もあれば、厳しい月もあります。思った通りにいかない時期もあるでしょう。それでも数字を見る。

それは自分を責めるためではなく、院をより良くするためです。

数字を見る人は、冷たい人なのではありません。むしろ逆です。本気でこの院を良くしたいと思っている人ほど、数字から逃げません。

なぜなら数字は、患者様の流れ、スタッフの働き方、広告の質、院の継続力、そして未来の可能性まで映し出しているからです。

数字を見ることは、院の過去を知ることではなく、院の未来に責任を持つことなのです。そしてそれは、インサイドアウトの実践でもあります。

外側の結果に一喜一憂するのではなく、院の内側にある流れを整え、未来を創っていくための行為だからです。

まとめ

数字を見ることは、経営を締めつけるためではありません。院を整えるためであり、院の状態を知るためです。

外側の出来事に振り回されず、院の内側の構造を理解するための手がかりであり、院の生命活動を受け取ることでもあります。

それは、インサイドアウトの視点で院を見つめることでもあります。

もし今、「数字が苦手だ」「何から見ればいいか分からない」「感覚でやってきた」と感じていたとしても、大丈夫です。

大切なのは、完璧に管理することではありません。

最初の一歩は、数字を“怖いもの”ではなく、“院の声”として見始めることです。そこから経営は、確実に変わっていきます。

そしてその変化は、インサイドアウトで院を整えていく第一歩になるはずです。

院の状態を構造で捉える力は、インサイドアウトを実践するための基盤になります。

数字は、あなたを縛るものではありません。
数字は、あなたの院の可能性を教えてくれる存在です。

その声を、これから一緒に学び、磨き、活かしていきませんか。

次に読む:シリーズ 2 / 30

▶ なぜ院経営者は数字を見なくなるのか|5つの理由と抜け出し方【第1章 #2】

この続きは、INSIDE OUT NUMBERS オンラインサロンで

数字を見るとは、院を見つめることでした。では、先生の院は、いま何が見えていますか。

この記事でお伝えしたのは、なぜ数字を見るのか、そして数字をどう受け取るのかという話までです。実際に何を、どう数えるのかは書いていません。

低いところに手がかりがあると分かっても、その数字が出ていなければ手がかりになりません。

「見よう」と思った次の日に、何から数えればいいのか。そこでつまずく先生が、いちばん多いのです。

サロンでは、最初の月に打つものを5つに決めています。先月の実人数、今月の新患、今月の実人数、延べ来院回数、売上。この5つだけです。

その問いに答えられるのは、先生の院の数字だけです。

インサイドアウト・ナンバーズのオンラインサロンでやることは、3つだけです。毎月、5つの数字を打つ。3ヶ月で、先生の院の基準線を出す。

そこから、手を入れる場所を1つに絞る。むずかしい計算は、ひとつもありません。使うのは電卓だけです。

3ヶ月目、先生の手元には、おなじ形の紙が3枚たまっています。

それを並べた日に、はじめて「うちは、ここが低い」と、感覚ではなく数字で言えるようになります。見る、というのは、そこまで行って完成します。

3ヶ月は、待つ時間ではありません。数えている時間です。数字は毎月しか増えませんから、始めた月が、そのまま起点になります。

来月からにすれば、分かるのも1ヶ月あとになります。

まず、今日のうちにその5つを出してみてください。それだけで、先生の院の1ヶ月目が終わります。

手が止まったところが、いま足りていないものです。

そこから先を一緒に埋めていくのが、インサイドアウト・ナンバーズのオンラインサロンです。

 INSIDE OUT NUMBERS オンラインサロンの募集ページは、現在制作中です。準備ができ次第、ご案内します。

金城 寿生

執筆者金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

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