ケア計画に繫げるレントゲン説明術(5ステップ)

説明

臨床において、患者様1人1人のケア計画を立てることは非常に難しさを感じます。多くの場合は、臨床経験からケア計画を立てているのが現状になります。しかし、患者様の視点で考えると科学的で客観的なデータをもとにしたケア計画であれば、納得してケア計画通りに通院することができるのではないでしょうか。

シオカワスクールでは、様々な検査を用いて客観的にケア計画を行っていきますが、患者様にとって1番納得できるのがレントゲン評価になります。レントゲン画像は、患者様の状態を視覚化することが可能になり、患者様自身のお身体の状態を理解することが可能なツールになります。

今回のコラムでは、5つの項目に分けてどのようにレントゲン説明を行っていけば、先生の提示したケア計画に納得することができるのかを解説していきます。

(1)自己紹介&目的

必ず説明を始める前に、自己紹介や患者様のお身体の状態などの質問から始めることが重要になります。安心して説明を行う上で、まず患者様の不安や疑問を取り除くことで、互いに安心してレントゲン説明に取り掛かりことが可能になります。

例えば、レントゲン説明が2回目の来院時の場合、初診日のお身体の状態と現在の状態での変化などを聞き出すことも大切になります。状態に大きな改善が見られた時でも再度、神経と脳の重要性をお伝えして先生が治したのではなく、あくまでも患者様の自然治癒力によって改善したことをお伝えすることが重要になります。

また、前回から変化が見られない場合や状態が悪化している場合には、しっかりと患者様の状態をレントゲン画像にて説明を行っていきましょう。

また、レントゲン説明を行う前に、その”目的”を明確にすることが非常に重要になります。レントゲン説明では、患者様の現在の状態を把握することと、来院頻度(ケア計画)の決定を行うことが目的となりますが、患者様をケア計画通りに通院するために説得させるのではありません。お互いに納得してケアを続けていくことが目的となります。

お互いにレントゲン説明の目的を明確にすることで、患者様もレントゲン説明に参加して行うことが可能になり、スムーズにレントゲン説明を行うことが可能になります。

(2)画像の部位と左右とランドマークの説明

画像の部位の確認

患者様の多くはレントゲン画像に見慣れてはいません。説明を始める前にまず、撮影した画像の部位の説明から始めましょう。私たちカイロプラクターにとっては、当たり前のことでも患者様にとって当たり前でないことの方が多くあります。そのために私たちにとっての当たり前をしっかりと説明することで互いに安心してレントゲン説明を行うことが可能になります。

画像の左右の確認

次に重要なことは、特にカイロプラクティックのレントゲン画像は、後ろから見て評価を行いますので、一般的な病院のレントゲン画像とは、左右反転しています。まずは、撮影した画像の左右の説明を行いましょう。

全体的なランドマークの確認

これからレントゲン説明を行う上で必要なランドマークの確認を行います。脊柱の全体的なカーブや背骨の数や椎間板や椎間孔や骨盤の傾きなどの確認を行います。このランドマークの説明では、患者様の主訴としている部位に集中して行うことで、より患者様が集中して説明を聞くことが可能になります。

(3)3段階の説明

カイロプラクターには、レントゲンの診断権はありませんので、病理や診断を伝えることはできません。画像を見たそのままを患者様と共有することが重要になります。

この評価では、全体的な脊柱の生理的な湾曲や傾きや捻じれなど視覚的に理解しやすい部分の説明を行います。この段階では、患者様にどの段階に位置しているか、どのような癖があるのかを把握して頂くためが目的となります。

正常な場合は、生理的な湾曲があり、筋の緊張のなく、関節の可動域制限もない状態を示します。第1段階では、生理的なカーブが減少し、軟部組織の緊張が見られ、軽度の関節の可動域に制限が見られます。第2段階では、椎間板スペースの狭まりが確認され、関節部分や骨の変形も見られ、中度の関節の可動域に制限が見られます。第3段階では、椎間板のスペースは無くなり、骨と骨が癒合し、神経組織の萎縮や重度の関節の可動域制限が見られます。

(4)椎間板の6段階評価(D1~D6)

次に行う評価では、1つ1つの椎間板の状態を説明していきます。ガンステッド・カイロプラクティックでは、椎間板を6段階評価で行います。慢性度合いによって椎間板の幅が狭まって行きます。この評価を参考にして来院頻度の特定を行っていきます。

正常な椎間板は、十分なスペースが確保され、椎間孔スペースも確保されきれいな卵型をしています。D1の椎間板の場合は、急性期によって炎症と膨張によってクッションのスペースが増大しています。

D2の椎間板の場合は、後方部の椎間板のスペースから徐々に狭まって行きます。この箇所には6カ月以上の負荷が掛かり続けていたことが推測されます。D3の椎間板の場合は、D2よりさらに後方部の椎間板が閉じてきます。この箇所には2~5年以上の負荷が掛かり続けていたことになります。評価として重要なことは、D2&D3の段階では前方部はスペースがしっかりと保たれていることが確認できます。

D4の椎間板の場合は、前方部と後方部の両方の椎間板のスペースの狭まりが確認されます。この箇所には5~10年以上の負荷が掛かり続けていたことになります。D5の場合の場合は、D4よりさらに前方部と後方部の両方の椎間板のスペース狭まりが確認されます。この箇所には10~15年以上の負荷が掛かり続けていたことになります。

D6の場合の椎間板の場合は、椎間板のスペースは無くなり、上下の骨が癒合している状態になります。この箇所には15年以上の負荷が掛かり続けていたことになります。

(5)ケア計画の提案

上記の1~4項目をしっかりと説明することで、客観的にケア計画をお伝えすることが可能になります。当院では、初期集中期(初診日から1ヶ月)を3段階に分けたケアを提案しています。状態の段階に応じて週1~3回の来院頻度を設定しています。この期間では、徹底して症状の緩和と問題への理解を目的とし、患部が炎症し神経が損傷しているので最初の1ヶ月でどれだけ炎症が改善するかが重要になってきます。治るスピードは人それぞれですが、最初の1ヶ月でどれくらい変化するかが非常に重要になって行きます。

初期集中期のケア計画

初期集中期では、初診日から1カ月の期間となります。レントゲン評価で、第1段階や椎間板の状態がD1&D2の場合は、週1回からケアを開始していきます。

第2段階や椎間板D3&D4の場合は、週2回からケアを開始していきます。第3段階や椎間板D5&D6の場合は、週3回からケアを開始していきます。

このように、ガンステッド・カイロプラクティックでは、ケア計画をレントゲン評価にて客観的に提案しています。もちろん、そのほかの検査(体表温度測定、静的触診、動的触診、視診)に大きな変化や改善が見られた場合は、そのデータを考慮しながら正確にケア計画を決定します。

執筆者塩川 雅士D.C.

1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。

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