院で数字を共通言語にする|スタッフが育つチームの作り方【第1章 #8】

「うちは数字で縛りたくないんです。」

この言葉の背景には、優しさがあります。スタッフにプレッシャーを与えたくない。数字で人を評価する文化にはしたくない。とても大切な姿勢です。

その姿勢は、正しいと思います。私たちも、人を数字で評価しません。

ただ、ひとつだけ分けて考えたいことがあります。「数字で人を評価しないこと」と、「数字を見ないこと」は、別のことです。

数字がない院で、起きていること

目標も基準もない院では、毎日は忙しく流れていきます。患者様は来院し、施術は行われ、スタッフも一生懸命働いています。

しかし「いま、どこが弱いのか」という共通の見え方がないため、努力が積み重なっていきません。

たとえば、離脱が増えている月があったとします。数字を見ていなければ、それは「なんとなく最近少ない」で終わります。

増えても減っても、振り返る手がかりがありません。

その結果、努力は感覚の中に埋もれていきます。忙しく働いているのに成長実感が生まれないのは、努力が足りないからではありません。

どこが変わったのかを、見る物差しがないからです。

では、何に目標を置くのか

目標を置くのは、売上だけです。

「月商をいくら増やしたいか」。これは経営者が決める数字で、現場の行動で作りにいくものではありません。

離脱率、リピート率、新患数、稼働率、卒業された方の数。これらには、目標を置きません。

理由は、優しさではありません。構造の問題です。

数字に目標を置いた瞬間、現場はその数字に向けて動きます。

カルテの締め方が変わります。来なくなった方の扱いが、都合よく動きます。新患に含めるかどうかの線が、月ごとにずれます。

数字は良くなります。そして、測りたかったものが測れなくなります。

とくに離脱率は危険です。この数字を下げる最短の方法は、患者様を終了させないことだからです。

目標にした瞬間、囲い込みが「正解」になります。

私たちが避けたいのは、まさにそこです。

目標ではなく、分岐点として使う

では、基準値は要らないのか。要ります。ただし役割が違います。分岐点は、目印です。

「この数字以下を目指してください」ではなく、「超えていたら、まず出口を見てください」という意味です。

自分の院がどちら側にあるか。それを見るためだけの線です。目標にすると現場が動きます。目印なら、動きません。

共通言語があると、会話が変わります

では、チームには何を渡すのか。院全体の数字です。

月に一度、院全体の数字を共有している院では、改善が個人の努力に依存しません。

離脱が増えたとき:

✗「誰のせいか」という議論

「どの場面で関係が切れているか」という議論

新患が減ったときも、「景気が悪い」「競合が増えた」という外側の理由で終わらせません。「初回の説明は届いていたか」「次回の予約は取れていたか」と、内側を見ます。

これが、インサイドアウトの文化です。外側に責任を求めるのではなく、内側の構造を整える姿勢です。

数字を共通言語にすると、院全体が「構造で考える組織」に変わります。感覚ではなく事実で話す。感情ではなく打ち手で話す。

ただし、個人の数字は出しません

カイロプラクターごとの数字を、評価に使わないでください。そして、人事評価には使わないでください。

評価に使えば、無理にでも来院させる動機が生まれます。並べて比べれば、単月の振れで人を評価することになります。

それに、実務としても成立しません。担当する患者様が少ない月は、同じ人・同じやり方でも、数字が大きく振れます。

渡すのは、院全体の数字です。

「うちの院は、いまこの場面で落ちている。だから今月は、この1本を全員で実行する」。これが、共有すべき情報です。

そして、単月では決めません

月ごとの数字は、想像以上に動きます。良い月に手を打たず、悪い月に慌てて方針を変える。これを繰り返すと、施策が毎月入れ替わり、何も定着しません。

単月は「気づくため」に使い、「決めるため」には使わない。

判断は、3ヶ月ならしで行います。これだけで、意思決定は安定します。

数字は、成長の記録です

共通の物差しがあると、スタッフは自分たちの変化を実感できます。先月より、初回の説明が届くようになった。計画どおりに来られる方が増えた。

これらは単なる数字の変化ではありません。関わり方が変わった証拠です。

数字は冷たいものではありません。誰かを縛るための道具ではなく、同じ方向を向くためのコンパスです。

4つの物差し

① 目標を置くのは、売上だけ。ほかの数字には置きません

② 基準値は、目標ではなく分岐点。超えていたら見にいく、それだけ

③ 個人の数字のみを出さない。個人の数字のみを評価に使わず、定量面のみでの評価には使いません

④ 単月では決めない。判断は3ヶ月ならしで

数字を恐れる文化ではなく、数字を共通言語として扱う文化。その違いが、チームの未来を決めます。

先生の院には、共通の見え方がありますか。その数字は、スタッフを追い込むものになっていないでしょうか。

それとも、同じ方向を向くための地図になっているでしょうか。

次に読む:シリーズ 9 / 30

▶ 数字は院を縛らない|経営の不安を減らし自由をつくる考え方【第1章 #9】

この続きは、INSIDE OUT NUMBERS オンラインサロンで

数字を共通言語にする。では、チームには何を渡しますか。

この記事でお伝えしたのは、渡してよい数字と、渡してはいけない数字の線引きまでです。院全体の数字をどう出すのかは書いていません。

渡すものが決まっても、出せなければ共有はできません。

その問いに答えられるのは、先生の院の数字だけです。

INSIDE OUT NUMBERS は、毎月、自分の院の数字を出して、どこが低いのかを自分で見つけられるようになる場です。

何を、どう数えるか。数えたあと、どう確かめるか。そして、いま院のどこが低いのか。そのすべてを、ご自身の手でできるところまでサポートいたします。

 INSIDE OUT NUMBERS オンラインサロンの募集ページは、現在制作中です。準備ができ次第、ご案内します。

金城 寿生

執筆者金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

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