ナーボスコープの重要性とは?

体表温度測定

体表温度測定=神経機能の検査

脊柱の体表温度測定は、神経機能の分析を行なうもので、シオカワスクールにおいてサブラクセーションを見つけるための一番重要視すべき検査法の1つになります。

もちろん、サブラクセーションを見つけるために脚長差の分析、姿勢分析、レントゲン分析、骨盤/椎骨の可動域分析などの様々な検査は重要ですが、それらすべては構造的な検査になります。しかし、体は神経の働きによってコントロールされていることを忘れてはいけません。

どれだけ脚長差がなくなったとしても、姿勢が良くなったとしても、レントゲン分析で正常な数値になったとしても、骨盤や椎骨の可動性が正常になったとしても神経機能に問題が生じれば、パフォーマンスの向上は見込めません。まずカイロプラクターとして神経機能に重点を置いた検査を行うことが最も重要になります。

歴史

1920年B.J.パーマーによって、初めて神経組織の研究が行われました。多くの臨床家が脊柱を触診した時に、“ホット・スポット”という熱を発している部位に疑問を抱いていました。そこでB.J.パーマーは、そのホット・スポットの研究を始めました。

その結果、ホット・スポットは、サブラクセーションと関係性があることが分ってきたのです。B.J.パーマーは、神経組織や神経束の圧迫による神経エネルギーの流れの低下がこのホット・スポットの原因であることを発見しました。

1923年B.J.パーマーは、ドサ・エヴァン先生にホット・ポットを感知することが可能な器具のデザインと設計を依頼し、研究を進めました。エヴァン先生の研究は、1820年にドイツの物理学者T.J.シーヴェックによって発明された熱電気による測定器を基準にしたもので、ニューロカロメーター(NCM)の開発の始まりでもあったのです。このニューロカロメーターには、温度を測定する二つの先端が存在し、脊柱の両側の体表温度を測定することを可能としました。

そしてB.J.パーマーはこのNCMを使用し、神経伝達の阻害(生命エネルギーの低下)している部位の針のゆれを分析、ホット・スポットの測定を可能にしました。

今日、生理学の教科書にもなっているガイトン先生でさえ、脊柱両側の温度は、交感神経によって血管の収縮と拡張によって血液の流れを制御していると唱えています。よって現実的に、私たちが皮膚の熱を観測することは、神経生理学的なものを分析することと同じと言えます。

NCMの発見は、カイロプラクティックの臨床に大きな革命を与えました。カイロプラクティックの臨床で初めて客観的なデータの基、サブラクセーションを分析、実際にアジャストメントが体の神経生理にも影響することを立証しました。しかし、このNCMにはいくつかの問題点が存在していました。

例えば、記録を残すことができない、術者の解釈の能力に個人差が出てくることでした。特に、分析時には、NCMを患者の脊柱に沿って一定のスピードで注意しながら行うと同時に、針のゆれ(ホット・スポット)の位置を覚えることも行なわなければならなかった。

結果、毎回分析時には記録用紙を作成し、針のゆれを残すことが必要となりニューロカログラフ(NCGH)へと発展していきました。このNCGHとは、単純にNCMと記録する装置がつながっていて、分析時には自動的に記録を残すことができる器具でした。このNCGHはオットー・シェーンベック氏によって開発されました。このNCGHの登場により、現在使用されているパターン・システムの研究が始まったのです。

そしてNCM/NCGHの成功と共に様々な器具が発展していきました。1940年には、現在の原型であるナーブ・スコープが製造され、ガンステッド・カイロプラクティックにおいて代表的な検査器具となりました。

ナーボスコープとは?

自律神経には、上皮の毛細血管を拡張、収縮する働きがあり、その事により体表温度を調節しています。

血液の流れは全て神経が制御しているので、皮膚の温度を調べることでその周辺の神経の状態が正常か、異常かを知ることができます。

背骨に沿って温度センサーを備えた2つの先端を上皮に当て、不均一な温度変化がある箇所をピンポイントで的確に見つけ出します。

サブラクセーションによって神経機能に異常が生じた場合、毛細血管の拡張や収縮に誤作動が起き、体表温度に異常が生じます。

それをナーボスコープによって、体表温度を測定し、正確にサブラクセーションを特定することが可能になります。サブラクセーションの兆候である、神経病理の検査を行うことができるようなりました。

体表温度の測定は、サブラクセーションの有無、正確な場所、いつアジャストメントを終えるか、慢性/急性などの情報を高い確率で知る客観的な検査が可能になります。

また、神経機能を分析する検査法により科学的なデータを基にケア計画を立てることができ、互いに安心したケアを提供することが可能になります。

執筆者塩川 雅士D.C.

1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。

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