問診は「症状を聞く技術」ではなく「患者を理解する時間」である

【なぜ問診は結果につながらなくなるのか】

「しっかり問診しているのに、なぜか結果につながらない。」この違和感は、多くの治療家が一度は経験しているのではないでしょうか。

知識もある、技術も磨いている、問診も丁寧に行っている。それでも結果が安定しない。その原因を「技術不足」や「経験不足」と考えてしまうことも少なくありません。

しかし実際には、その違和感の多くは「問診のやり方」ではなく「問診に向き合うマインド」にあります。どれだけ正確に質問を重ねても、どれだけ多くの情報を集めても、問診の土台となる考え方がズレていれば、見えてくるものは本質から外れていきます。

ここで一度立ち止まって考えていただきたいのは、あなたは問診の時間をどのような時間として捉えているかということです。

問診は症状を特定するための作業でしょうか。それとも施術の前段階の準備でしょうか。もしそう捉えているのであれば、問診の本来の価値をまだ十分に活かしきれていないかもしれません。

問診とは単なる情報収集ではありません。問診とは、患者さんという一人の人間と向き合う時間であり、その人の人生や背景に触れていく入り口です。この認識があるかどうかで、問診の質は大きく変わります。

 

【問診の本質は「理解する姿勢」にある】

シオカワスクールで大切にしているインサイドアウトの健康観は、「外側から何かを与えることで健康を作る」のではなく、「内側にある本来の働きを引き出す」という考え方です。

この視点は施術だけでなく、問診にも深く関係しています。問診の場で患者さんが自分自身の状態に気づき、自分の身体に意識を向け、自分の内側に関心を持つようになること。そのきっかけをつくることこそが、問診の大きな役割の一つです。

つまり問診とは、治療家が情報を得る時間であると同時に、患者さんが自分自身を理解していく時間でもあります。この双方向のプロセスを意識できているかどうかが、問診の質を決定づけます。

多くの治療家は「何を聞くか」に意識が向きがちです。もちろん質問の内容は重要です。しかしそれ以上に大切なのは、「どのような意図でその質問をしているのか」という内側の姿勢です。

例えば同じ質問であっても、「原因を突き止めたい」という意識で聞くのか、「この人を理解したい」という意識で聞くのかによって、相手への伝わり方も、その後に得られる情報の質も大きく変わります。

人は無意識のうちに相手の意図を感じ取ります。この先生は評価しようとしているのか、この先生は理解しようとしているのか。その違いは言葉以上に態度や空気感として伝わります。理解しようとする姿勢が伝わったとき、患者さんは安心して自分のことを話し始めます。

その結果として、表面的な情報ではなく、本質に近い情報が自然と引き出されていきます。逆に、評価されていると感じたり、正解を求められていると感じたりすると、患者さんは無意識に自分を守ろうとし、本当に伝えるべきことを隠してしまうことがあります。

このように問診は、質問の技術以上に「関係性の質」によって成り立っています。

 

【インサイドアウトで変わる問診の在り方】

では、その関係性はどこから生まれるのでしょうか。それは治療家自身の在り方から生まれます。自分は患者さんに何を提供したいのか、自分はどのような存在として関わりたいのか、この内側の軸が曖昧なままでは、どれだけ技術を学んでも問診は安定しません。

インサイドアウトの考え方で言えば、外側のテクニックを整える前に、まず内側の姿勢を整えることが必要です。

問診において最も重要なマインドは、「目の前の人を理解したい」という純粋な関心です。この関心があるとき、自然と相手の言葉だけでなく、表情や仕草、間の取り方、声のトーンといった非言語的な情報にも意識が向くようになります。

そこには言葉以上の情報が含まれており、その人の状態や背景を理解するヒントが隠れています。

また、理解しようとする姿勢は「待つ力」にもつながります。問診の中で沈黙が生まれたとき、不安になってすぐに次の質問をしてしまうことはありませんか。しかしその沈黙は、患者さんが自分の内側と向き合っている大切な時間かもしれません。

その時間を尊重できるかどうかも、問診の質に大きく影響します。問診のマインドが整っている治療家は、沈黙を埋めようとはしません。むしろその時間を大切にし、患者さんが自分の言葉で話し始めるのを待ちます。

この「待つ姿勢」こそが、インサイドアウトの関わり方そのものです。外から答えを与えるのではなく、内側から気づきが生まれるのを支える。この姿勢が問診に反映されたとき、患者さんは受け身ではなく主体的に自分の状態に向き合うようになります。

さらに重要なのは、問診の中で「正しさ」を押し付けないことです。治療家としての知識や経験が増えるほど、「それは違う」「本当の原因は別にある」と修正したくなる場面が増えてきます。しかしその瞬間に関係性は崩れ始めます。

問診の場では、まず患者さんの認識をそのまま受け止めることが大切です。正しいかどうかではなく、その人がどう感じ、どう捉えているかを理解すること。その上で必要に応じて視点を広げていく。この順番を守ることで、患者さんは安心して新しい視点を受け入れることができるようになります。

問診とは、答えを提示する場ではなく、共に考える場です。そしてそのプロセスの中で生まれる気づきこそが、変化の出発点になります。

シオカワスクールで学ぶ価値は、技術や知識だけではありません。このような「在り方」を学び、それを臨床で実践できるようになることにあります。

問診のマインドが変わると、臨床の見え方が変わります。同じ患者さんでも、見えてくる情報の質が変わり、判断の精度が上がり、結果にも変化が現れます。それは特別な技術を使ったからではなく、関わり方が変わったからです。

最後に改めて問いかけたいと思います。あなたは問診の時間を、どのような時間として使っていますか。情報を集める時間として使っていますか。それとも、目の前の人を理解する時間として使っていますか。

この違いは小さなものに見えて、臨床全体に大きな影響を与えます。問診は技術ではありません。あなたの在り方そのものです。その在り方を整えることから、すべての臨床は変わり始めます。

 

 

 

金城 寿生

執筆者金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

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