問診の質を変える6つの具体的な関わり方

【問診の出発点は「協力者としての姿勢」】

問診の質は、どれだけ多くの質問を知っているかでは決まりません。どれだけ患者さんの言葉を引き出し、その人の背景や内側の状態に触れることができるかによって決まります。

シオカワスクールで大切にしているインサイドアウトの考え方においても、外側から情報を集めるのではなく、患者さんの内側から気づきや変化を引き出すことが重要です。そのために必要なのが、問診における具体的な関わり方です。

まず大前提として持っていただきたいのは、「私はあなたの協力者である」という姿勢です。

患者さんにとって問診は、評価される場でも、正解を求められる場でもありません。自分の状態を安心して話せる場である必要があります。

そのためには、相手が話しやすいと感じる環境をつくることが不可欠です。自分が話す立場になったとき、相手がどのような態度であれば話しやすいでしょうか。

目を合わせず無表情で、相槌もなく、ただ質問だけが続く状態では、本当に聞いてくれているのか不安になるはずです。

だからこそ、問診ではまず「しっかり聞く」ということを徹底する必要があります。患者さんが話しているときは途中で遮らず、適度に相槌を打ち、関心を持っていることを態度で示す。

この基本的な関わりが、患者さんの安心感を生み出し、より深い情報へとつながっていきます。

 

【信頼をつくる「聞き方」と「触れ方」の技術】

そしてもう一つ重要なポイントは、カルテに書かれている内容をすべて一度は触れるということです。

主訴に直接関係がないように見える内容であっても、軽くでも触れることで患者さんは「しっかり見てもらえている」と感じます。逆に、書いた内容に一切触れられないと、「見ていないのではないか」「関心がないのではないか」と不安を感じてしまうこともあります。

また、主訴として明確に書かれていない内容の中に、実は長年気にしている問題が含まれていることも少なくありません。その一言がきっかけとなり、本質的な情報が引き出されることもあります。

次に意識していただきたいのは、患者さんの話すリズムを崩さないことです。問診をしていると、どうしても自分のペースで質問を進めたくなります。

しかし患者さんにはそれぞれ話しやすいテンポがあります。そのリズムを尊重しながら話を聞くことで、「この先生は自分の話を理解しようとしてくれている」と感じてもらうことができます。

逆に、話の途中で遮られたり、質問が次々と被さってくると、患者さんは思考を止めてしまい、本来話したかった内容が出てこなくなります。問診は質問の量ではなく、会話の質で決まります。

 

【患者のタイプに合わせた関わり方】

また患者さんのタイプに応じた関わり方も重要です。自分のことを詳しく話してくれる方もいれば、必要最低限しか話さない方、緊張して言葉が出てこない方、人見知りの方、痛みが強く集中できない方など、さまざまな方がいます。

さらに、これまでにケアを受けた経験がある方と初めての方では、理解度や不安のレベルも大きく異なります。

特に初めて来院される患者さんは、想像以上に緊張しています。初めての場所で、初めての相手に、自分の身体を任せるというのは大きな決断です。その緊張を理解せずに質問を続けても、表面的な情報しか得ることはできません。

もし患者さんがなかなか話せない場合は、「何を聞くか」ではなく「何なら話しやすいか」という視点に切り替えてみてください。

カルテの内容や趣味、日常生活などから会話のきっかけを探し、その人が話しやすいテーマから入っていくことが有効です。

好きなこと、大切にしていること、興味のあることについての話題は、緊張を和らげる力があります。その中で徐々に信頼関係が築かれていくと、自然と本題にも入っていけるようになります。

 

【情報を「整理する力」が臨床を変える】

次に重要なのが、話してくれた内容を整理する力です。患者さんの中には、自分の状態を理解してほしいという思いから、さまざまな情報を一気に話してくれる方もいます。その際、部位や時系列が混在し、何が主訴なのか分かりにくくなることがあります。

そのようなときは、「今一番困っていることは何ですか」「最初に始まったのはどの症状ですか」といった問いかけを行い、情報を整理していきます。

これにより主訴が明確になり、その他の症状との関連性も見えてきます。このプロセスは単なる整理ではなく、患者さん自身が自分の状態を再認識する機会にもなります。

そして問診で得た情報は、必ずその場でまとめる習慣をつけてください。よくあるのが、問診中はしっかり聞いていたはずなのに、後でカルテを見ると情報が不十分になっているケースです。

患者さんを待たせることに対する遠慮や、沈黙への不安から記録を後回しにしてしまうことが原因です。

しかし、患者さんは「しっかり聞いてもらえている」と感じていれば、まとめる時間も自然と受け入れてくれます。むしろ、その姿勢は誠実さとして伝わります。

大切なのは、無理に会話を続けることではなく、必要な情報を正確に整理することです。ただし、間が長くなりすぎるとリズムが崩れるため、そのバランスには注意が必要です。

 

【信頼を損なわない「答え方」の原則】

さらに問診では、患者さんの発言に対する「答え方」も非常に重要です。患者さんから他の医療機関や治療院での経験について話を聞くことがあります。

その際に、他の専門家を否定するような発言をしてしまうと、患者さんとの信頼関係だけでなく、地域の医療との関係性にも影響が出る可能性があります。

私たちは、その場にいなかった以上、当時の状況や判断の背景を正確に知ることはできません。また、患者さんにとってはどの医療機関も「頼った場所」であることを忘れてはいけません。

そのため、まずは事実と感情に共感することが大切です。「大変でしたね」「しっかり検査も受けられたのですね」といった言葉だけでも、患者さんは受け止めてもらえたと感じます。この積み重ねが信頼につながります。

 

【問診は気づきを生み出すプロセス】

そして最後に、問診は患者さんにとっても気づきの時間であるということを忘れてはいけません。自分の状態を言葉にし、それを自分自身で聞くことで、これまで気づかなかったことに気づくことがあります。

「この動きがきっかけだったかもしれない」「この習慣が影響しているかもしれない」といった内省が生まれます。このプロセスこそが、インサイドアウトの健康観につながります。

外側から与えられるのではなく、自分の内側から理解が深まることで、本質的な変化が始まります。問診とは単なる情報収集ではありません。患者さんの背景を知り、信頼関係を築き、そして患者さん自身が自分の身体に意識を向けるきっかけをつくる時間です。

この本質を理解し、具体的な関わり方を磨いていくことで、問診は確実に変わっていきます。そしてその変化は、臨床全体の質を大きく引き上げていきます。

 

 

 

金城 寿生

執筆者金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

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