なぜ「伝えないこと」が信頼につながるのか ― カイロプラクティック・アシスタントの接遇の本質

受付(CA)

言葉は常に善意とは限らない

私たちは無意識のうちに、「伝えることは良いこと」「説明することは親切」と考えがちです。しかし接遇の現場では、言葉が必ずしも安心を生むとは限りません。

むしろ、過剰な説明や不用意な言葉が、相手の内側にある落ち着きを乱してしまうこともあります。

言葉は便利で強力な道具である一方で、使い方を誤ると、相手の選択や安心を奪う刃にもなり得る存在です。

カイロプラクティックアシスタント(CA)は、この言葉の影響力を理解し、必要以上に言葉を重ねない接遇を実践する専門的なCA を担っています。

不安なとき、人は言葉を処理できない

人が不安を感じている状態では、情報を受け取る余裕が極端に低下します。頭では聞いていても、心には届いていないという状態です。

そのようなときに言葉を重ねても、理解は深まらず、むしろ混乱が増していきます。

接遇において重要なのは、「何を伝えるか」よりも、「今は伝えるべき状態かどうか」を見極めることです。

スタッフとしてCAに求められるのは、情報量ではなく、相手の状態を感じ取る感受性です。

沈黙は不親切ではない

沈黙というと、気まずさや不足を連想する人も多いかもしれません。しかし安心が保たれている沈黙は、非常に豊かな時間です。

沈黙の中で人は自分の感覚に戻り、自分の状態を整理します。

受付の仕事の中で、CAが慌てて言葉を埋めようとせず、落ち着いた姿勢でその時間を共有することで、患者様は「待ってもらえている」「急かされていない」と感じることができます。

その感覚こそが、信頼の土台になります。

伝えないことは放置ではない

「何も言わない」という選択は、決して無関心や放置ではありません。

むしろ相手を信じているからこそできる態度です。今は説明よりも余白が必要だと判断し、その場を守ることは高度な接遇です。

CAは、何かを足す存在ではなく、不要なものを増やさない存在でもあります。その判断は経験と観察から磨かれていきます。

言葉が必要になる瞬間もある

もちろん、沈黙が常に最善というわけではありません。

相手が迷っているとき、誤解が生じそうなとき、安心を補強する一言が必要な場面もあります。ただしその言葉は、相手を動かすためのものではなく、相手が自分で整うための支えであるべきです。

断定せず、決めつけず、選択を残した言葉は、安心を壊しません。

声の少なさは空気をつくる

CAの存在感は、話す量では測れません。むしろ、必要なときだけ言葉を差し出し、それ以外の時間を静かに支える姿勢が、場全体の空気を安定させます。

その空気は患者様だけでなく、カイロプラクターや他のスタッフにも影響を与え、院全体に落ち着きと一貫性をもたらします。

このような関わり方は、外側から行動を変えようとするのではなく、内側から安心が生まれる環境を整えるインサイドアウト健康文化の実践でもあります。

信頼は「語られなかった時間」に宿る

振り返ったとき、人の記憶に残るのは、詳しい説明よりも、「落ち着いていられた」「急かされなかった」という感覚です。

その感覚は、語られなかった時間の中で育ちます。

CAが守っているのは、言葉そのものではなく、言葉がなくても成立する安心の質です。

それは一朝一夕では身につかない、CAの専門性のひとつです。

CAを目指しませんか?

たくさん話す仕事ではなく、必要なときに必要な分だけ関わる仕事に価値を感じますか。言葉で動かすより、空気で支える役割に魅力を感じますか。

もしそうであれば、カイロプラクティックアシスタントという在り方は、あなたの感性と深く響くはずです。

沈黙を恐れず、余白を守り、安心が育つ時間を支える。それがCAの重要な使命です。

あなたも、安心を壊さない接遇を体現する一人として、CAを目指してみませんか。

塩川 雅士D.C.

執筆者塩川 雅士D.C.

1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。

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