鍼灸×カイロではなく、カイロプラクターとして生きていくべき理由

鍼灸とカイロを組み合わせたいという思考の落とし穴

鍼灸師の皆様、はじめまして。元鍼灸師で、現シオカワスクール講師の関野貴友と申します。

鍼灸師の皆様におかれましては新しい知識を求め、より良い施術を患者様に提供するために様々な技術を学ぼうとする姿勢は、業界の大きな強みではないでしょうか。

鍼灸師として研鑽を積む中で、「もっと患者さんのためになる技術を」と探求し、カイロプラクティックに辿り着いた方も多いことでしょう。

私自身もそうでした。

長年鍼灸の世界で臨床経験を積んだ後、カイロプラクティックと出会い、そこに新たな可能性を見出したのです。

最初は私自身も「鍼灸とカイロの両方を武器にすれば、より多くの患者さんに対応できるのでは」と考えていました。しかし、臨床を重ねるにつれ、私は重要な気づきを得ました。

「二つの異なる哲学と技術を中途半端に持つよりも、一つの道を深く極めた方が、患者さんにとっても、自分自身の成長にとっても価値がある」と。

結果として、私はカイロプラクティック一本で勝負する道を選びました。
この選択は、多くの迷いと葛藤を経て辿り着いた決断でした。

今回のコラムでは、鍼灸の世界からカイロプラクティックへと軸足を移した私の視点から、
カイロプラクティックが持つ本質的な価値と、「専門性を極める」ことの意味について、皆さんと共有できればと思います。

1. カイロプラクティックの真の魅力を知る

カイロプラクティックと聞くと、「バキバキする」「怖い」といった印象を持つ方も多いのではないでしょうか。
特に鍼灸師の方々にとっては、まったく異なる施術体系と感じられることでしょう。

しかし、そうした表面的な印象の奥には、施術家としての視野を大きく広げる本質的な魅力が隠れています。

神経系や機能的なアプローチに基づくカイロプラクティックの考え方に触れると、「これまでの手技療法とは根本的に異なる」と気づくはずです。

レントゲンや各種検査機器を用いて身体の状態を客観的に評価するシステムは、施術者と患者さん双方に納得感と安心感をもたらします。

この「科学的な根拠に基づいた施術体系」は、真摯に臨床と向き合う施術家にとって、新たな地平を開いてくれるでしょう。

2. 根本から変わる施術の視点

鍼灸の現場では、目の前にある痛みや不調を取り除くことに焦点が置かれがちです。

本質的な鍼灸においては自然治癒力を引き出すことが目的という概念はありますが、多くはその症状を良くしてあげたい!という施術者の想い、悪い言い方をすればエゴが先行してしまします。

一方、カイロプラクティックでは「症状が現れる前の身体の状態」や「人間が本来持つ治癒力」に目を向ける視点を大切にしています。

「なぜその部位に痛みが出ているのか」
「身体のどのような機能が失われているのか」

という観点から身体を診ていくと、単に症状を追いかけるアプローチから脱却することができます。

機能的な回復を重視することで、患者さん自身の自然治癒力を最大限に引き出すサポートが可能になります。

これは、対症療法を超えた根本的な健康回復を目指す施術家にとって、大きな価値となるでしょう。

3. 自然治癒力を尊重する哲学

身体の不調を目の前にすると、「早く症状を取り除かなければ」と焦る気持ちが出てくるかもしれません。

しかし、症状の除去だけが目的になると、時として人間本来の自然治癒力を「超えよう」としてしまうことがあります。

どんなに優れた技術を持っていても、人間の持つ治癒力の範囲を超える施術は存在しません。

カイロプラクティックでは、自然の力を信頼することが根本思想となっています。

「症状を取る」のではなく「治る状態に導く」という考え方は、施術者が自らの役割を正しく理解し、患者さんとより良い関係を築くための重要な哲学と言えるでしょう。

その哲学があれば、鍼灸とカイロを混ぜていこうという思考は自然と消えてくるのです。
手を加えれば加えるほど、治癒力を超えようとしている状態に気がつくはずです。

4. 確かな根拠がもたらす自信と信頼

あなたが自信を持って施術するためには、確かな根拠が不可欠です。
カイロプラクティックでは、レントゲンやナーボスコープといった各種検査から得られる客観的データを基に、科学的な施術計画を立てていきます。

このアプローチにより、施術者は「自分の行っていることは理論的に正しい」という確信を持つことができ、その自信は結果として患者さんへの信頼感につながります。

「なんとなく良くなった気がする」ではなく、「なぜこのアプローチを選択したのか」を明確に説明できることは、これからの時代における施術者の重要な強みになるでしょう。

鍼灸との大きな違いはここにあります。
どうしても鍼灸は感覚の世界から抜け出すことはできません。

「ツボの位置は教科書とは少し違うんだけど」
「ここに気が停滞している部分がある」

など感覚的な話をさぞたくさん聞いてこられたと思います。
カイロプラクティックはそういった感覚のみに頼る世界から脱却することが可能なのです。

またカイロプラクティックのゴールは繰り返しになりますが、症状をとることではありません。

本来持つ治癒力が働く環境を作り出すことです。
たとえ症状が良くならずとも、神経の圧迫を取り除くという仕事さえ完了すれば、私たちは完璧な仕事をしたと堂々と振る舞うことができるのです。

人の治る力を信じるからこそ、このような向き合い方ができるのです。
科学的なデータを元に、症状に振り回されない、本質的な哲学を身につけることが可能なのです。

5. 専門性を極める選択の価値

鍼灸とカイロプラクティック、両方の手技を組み合わせるという選択も考えられます。
しかし、「異なる言語」を同時に習得しようとすると、それぞれの本質や深みを見失う恐れもあります。

だからこそ、どちらか一方の哲学と技術を深く探求するという道も、施術家として大きな価値を持ちます。

カイロプラクティックは、身体機能を科学的視点で捉え、神経系を中心とした構造と機能の関連性を重視します。

この世界観に深く入り込むことで、施術家としての視点や判断基準がより明確になり、施術の一貫性と効果が高まるのです。

これからの時代、単に痛みを取り除くだけでなく、「いかに健康に生きるか」という観点から施術を提供できる人材が求められています。

そのような時代の要請に応える選択肢として、カイロプラクティックという道は、多くの施術家に新たな可能性と力をもたらしてくれるでしょう。

現状に悩んでいる鍼灸師の皆様も、ぜひカイロプラクティックの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

関野 貴友

執筆者関野 貴友

1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。

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