動的触診の極意 | 注目すべき2つのポイント

フィクセーションとハイパーモビリティとは?
こんにちは。シオカワスクール講師の高島克哉です。
あなたは普段、臨床でどんな検査を使っていますか?
カイロプラクティックの検査には5つの項目があり、その中の一つに「動的触診(モーションパルペーション)」があります。これは、関節を実際に動かしてみて、その動きが正常かどうかを確認する方法です。
この動的触診は、サブラクセーションを正確に見つける際に非常に重要なポイントです。どれだけ視診や静的触診ができていても、動的触診ができていなければサブラクセーションを正確に見つけることは不可能です。
動的触診で大切なのは、関節の動きが「動かないのか」それとも「動きすぎているのか」を見分けること。つまり、フィクセーション(可動制限) と ハイパーモビリティ(過剰な可動性) の2つを見極めることがポイントです。
今回のコラムでは、フィクセーションとハイパーモビリティの違いについてお話ししていきたいと思います。
1. フィクセーション(可動制限)
関節の動きが硬く、滑らかさを失っている状態です。初めの動き(初動)が出にくく、方向によっては明らかに動かないと感じられることもあります。
多くのサブラクセーションは、このフィクセーションを伴っています。
炎症や浮腫(むくみ)、関節を守ろうとする筋肉の緊張などが原因で、関節の可動域が狭くなるのです。
ただし、「動かない=サブラクセーション」とは限りません。サブラクセーションは神経系に干渉を起こす状態のこと。その結果としてフィクセーションが現れることが多い、という理解が正しいのです。
2. ハイパーモビリティ(過剰な可動性)
逆に、関節が必要以上に動いてしまうのがハイパーモビリティです。触診すると、関節がスムーズすぎる、抜けるような感覚があるのが特徴です。
多くは「補正作用(カンパンセーション)」によって起こります。ある関節が硬くなると、その代わりに他の関節が過剰に動いて全体のバランスを取ろうとするためです。
一方で、外傷などが原因で靭帯が緩んでしまったり、構造的に不安定になっているケースもあります。この場合、ここをアジャストしてしまうとさらに不安定になり、状態が悪化する危険もあります。
そのため、ハイパーモビリティの箇所へのアジャストメントは原則として禁忌とされています。
3. 見極めの重要性
臨床で注目すべきは、基本的に「フィクセーション側」です。
ハイパーモビリティはサブラクセーションそのものではなく、多くは補正作用の結果です。だからこそ、補正部位を誤って調整してしまうと、不安定性を助長したり、症状を悪化させてしまうリスクがあります。
また、ハイパーモビリティの特徴に、「強い症状を訴えやすい」というものがあります。しかし、「痛みがあるからアジャストメントをする」という考えは危険を伴います。しっかりとサブラクセーションを見極め、アジャストメント箇所を選定していく必要があります。
4. 動的触診のチェックポイント
・初動で判断:動き出しに硬さがあるか、スムーズすぎるかを確認。初動を超えると他の関節の動きが関与し、正確な検査ができなくなってしまうため、必ず初動での判断が必要になります。
・上下左右差を比較:可動性は人それぞれ違います。必ず上下左右で比較し、「その人にとって異常かどうか」を判断する必要があります
・静的触診と組み合わせ:浮腫や筋緊張など、他の検査と組み合わせると精度が上がります。動的触診だけでアプローチを定めることはありません。
まとめ
動的触診で大切なのは、ただ「動く/動かない」ではなく、動きの少なさ(フィクセーション) と 動きすぎ(ハイパーモビリティ) を初動で正しく区別することです。
・フィクセーション:サブラクセーションと関係し、基本的に調整の対象
・ハイパーモビリティ:補正や不安定性のサインであり、調整対象ではない
この違いを見抜けるかどうかが、臨床においてとても重要な分かれ道になります。
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今回ご紹介した内容は、フィクセーションやハイパーモビリティのほんの一部にすぎません。
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