レントゲン評価における6つのメリットとは?

レントゲンの評価は、カイロプラクティック・システムの5つの検査法においてサブラクセーションを特定する為に必要不可欠になります。今回のコラムでは、レントゲン評価における6つのメリットをご紹介します。

(1)科学的で客観的な検査

レントゲン評価は科学的な検査法であり、客観的な検査ができる強力なツールとなります。カイロプラクティックのレントゲン評価では立位にて撮影を行います。これは、人間は通常重力が掛かった状態で生活をしているからになります。いつもの生活環境と同じ状態で撮影をすることで、どこの椎間板に負担がかかっているのかを正しく評価できるようになります。

また、カイロプラクティックでは脊柱全体(フルスパイン)で評価を行います。こうすることで、全体のバランスや問題の根本原因を特定することが可能となります。

カイロプラクティック・システムでは、『土台理論』を重要視しています。人間の土台部分は骨盤にあたります。建物と同じで基礎部分(土台)がぐらついていれば、そのひずみは上の階にまで影響します。このようにレントゲン画像によって全体像を把握することで、客観的に問題の根本原因を特定することが可能となります。

(2)癖や生活スタイルの把握

歯医者の先生は、歯の形状を評価することでその患者様がどのような食生活をしているかを評価することができると言われています。レントゲン画像から骨の形状を評価することで、様々な患者様の癖や生活スタイルを把握することが可能になります。

例えば、普段からパソコン作業やスマートフォンの使用によって下を向く前傾の姿勢をしていれば、バランスを取るために体は首のカーブを後ろに移動させ、首がストレートになります。一般的にストレートネックが様々な症状の原因と言われていますが、実際には多くのストレートネックの原因は、生活スタイルや姿勢と大きく関係しています。

このように、レントゲン評価を行うことで、患者様の癖や生活スタイルを把握することが可能になり、患者指導を行う際にも重要になります。長年の癖や生活スタイルを変えることは容易なことではありません、しかし患者様が自身のレントゲン画像を見て、癖や生活スタイルに気づくことができれば患者様の意識にも大きな変化を与えることが可能になります。

(3)アジャストメントの方向(リスティング)の決定

椎間板の角度や椎骨の変位などを確認することで、患部に対してより正確なアジャストメント方向を特定することが可能になります。レントゲン画像は、サブラクセーションの存在を視覚的に確認できる唯一のツールと言えます。

レントゲン側面像では、椎間板の方向の評価を行います。レントゲン正面像でリスティングの決定を行います。ガンステッド・カイロプラクティックでは、まず後方変位(P)を確認して、軸転変位(R/L)を確認して、側方変位(S/I)を確認します。リスティングを決定する際は、後方変位(P)があって初めてアジャストメントの対象となります。後方変位(P)がなければ、どれほど軸転(R/L)していようと、傾き(S/I)があろうとアジャストメントはしません。

リスティングは、カイロプラクターの世界共通語となります。たとえ言葉の通じない海外の先生でも、どこの椎骨をどのようなアジャストメントをしていたのかが瞬時に把握することが可能になります。

(4)椎間板の段階の評価

シオカワスクールで重要視している『土台理論』の他に、『椎間板理論』という理論があります。椎間板は、D1~D6と6段階で評価を行います。Dとはdisc(椎間板)の頭文字のDとなります。椎間板の評価を行うことでサブラクセーションが急性なのか慢性なのかの区別をすることができます。この評価を正しく行うことでケア計画も科学的に行うことができます。

D1:椎間板が明らかに膨張しているようであれば、急性期であるといえます。椎間板のレベルはD1という評価になり、炎症と膨張により椎間板スペースの増大が見られます。この場合は炎症が落ち着くことで椎間板スペースは改善が見込めます。

D2~D3:この段階では後方部の椎間板スペースが減少して、椎骨が後下方に傾きます。そして髄核は前方に移動します。この段階では定期的なケアにより、髄核が元の場所に戻るもとで椎間板スペースが改善します。D2では6カ月が経過。D3では2~5年が経過していると考えられます。

D4:この段階までいくと5~10年が経過していると考えられます。後方側が完全に閉じてしまうと、今度は徐々に前方側の椎間板スペースも減少していき、椎間板の水分は放出されていきます。クッション性の機能減少だったり、骨の変形が始まり、可動性は著しく減少してしまいます。前方の椎間板スペースは少し確保されているので、その厚みまでは改善する可能性がありますが、元の厚みまで改善することはありません。

D5:前方の椎間板スペースもかなり減少して上下の椎骨が接近し、可動性を制限します。骨を変形させ圧が加わっている箇所の補強をします。この段階までいくと10~15年の経過と考えられます。この段階までいくと椎間板スペースや椎骨の変形は変化せずに固定化されてしまいます。

D6:椎間板スペースはほとんど失われて、上下の椎骨がくっついてしまう状態となります。可動性は制限され、椎骨を変形させて圧が加わっている箇所を補強します。これは神経への負荷を避けるための防御反応となります。人間の脳は不必要なことはしません。本来、必要なはずのクッション(椎間板)を一つ無くしてでも、何よりも重要な神経を守っているのです。

(5)明確なケア計画の提案

椎間板は、必ず長い年月をかけて負担となった箇所の厚みが失われていきます。それを患者様にしっかりと提示することで、科学的な根拠に基づいたケア計画を提案することができます。ケアの初期段階では治療の間隔は開けずにケアを続けることが重要となります。

当院では、椎間板の段階に応じて初期集中期(初診日から1ヶ月間)のケア計画を週1~3回の来院頻度を提示して説明を行います。D1~D2の椎間板の場合は、初期集中期は週1回の頻度の提示を行います。D3~D4の椎間板の場合は、週2回の頻度の提示を行い、D5~D6の椎間板の場合は、週3回の頻度の提示を行います。

最良なケア計画を自信をもって伝えてあげることで早期の改善に繋がります。そして何より早期の改善は患者様のためになります。このような説明をしっかりと伝えることで患者様は納得してカイロプラクティック・ケアを受けることが可能になりますのでレントゲン画像は強力なツールであると言えます。

(6)過去の病歴

患者様も忘れているようなまた過去の事故歴などもレントゲン評価から分かる場合があります。難産で吸引や鉗子を使用したお産を経験したことや、幼少期の外傷、過去の大きな事故など、患者様自身も忘れているようなことも、親御さんに確認してみたら、そういえばといったケースもあります。レントゲン画像は、カイロプラクターと患者様の双方にとって安心で安全を与えてくれるメリットのあるツールとなります。

また、カイロプラクターは、ケアの禁忌となるリスク・ファクターを特定しなければなりません。日本では、カイロプラクターがレントゲン画像に対する診断権はありませんが、カイロプラクティックにおける禁忌症の疑いがある場合には、早期に専門医への紹介が必要になります。

レントゲン画像における禁忌症は、頚椎開口像と頚椎側面像にて評価を行います。レントゲン病理では、歯突起形成不全や骨折や脱臼などの骨の異常から、骨髄炎などの感染症、脊髄腫瘍などの筋肉や軟部組織の腫瘍性疾患など上部頚椎の扁平頭蓋底やアーノルド・キアリ奇形などが挙げられます。

執筆者塩川 雅士D.C.

1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。

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