「治すことが目的ではない」― 哲学が与えてくれた救いと気づき

治療家の皆さんにお聞きしたいことがあります。

あなたには「哲学」がありますか?

あるいは「理念」がありますか?

「とにかく治ればいい」

「結果さえ出せばいい」

もしそれがあなたの哲学だとしたら、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。

治せるかどうかに振り回されていた過去の自分

私はかつて鍼灸やマッサージに携わっていた頃、症状の改善だけをゴールにしていました。


・治れば喜ばれる
・治らなければ落ち込む
・患者さんの要求に応えることばかり考える


その繰り返しで、本当に苦しかったのです。

哲学が教えてくれた「役割」

カイロプラクティックの哲学に触れて気づいたのは、「治すことが目的ではない」 という真実でした。
私たちカイロプラクターの役割は、体の中に備わっている自然治癒力が最大限に働けるように、妨げとなっているものを取り除くこと。

つまりはサブラクセーション(神経圧迫)を取り除くことです。

「治す」のはあくまで患者さん自身の力です。
そこに確信があると、目の前の症状に振り回されず、アプローチに集中できる“ブレない心”を持てます。

ですから我々カイロプラクターは治療家では無いのです。

細かい話にはなりますが、そういった言葉ひとつひとつにこだわることもプロの仕事と責任です。

患者様も哲学を知ることで、ご自身の治る力に感謝が生まれ、変化していく体と心の過程へ感動が生まれ、自らの力で未来を切り開いていくことに希望を持てるようになるのです。

今多くの治療家がしていることは、依存関係の構築です。

先生が治したということになり、患者さんは先生に頼ることとなります。そうすることで依存しが生じ、やがて自らの意思で健康を築いていくことを忘れ去ってしまうのです。

治癒には時間がかかる

切り傷を思い浮かべてください。
浅い傷でも治癒には約3日はかかり、深ければもっと時間が必要です。


にもかかわらず、何年も積み重ねてきた症状が一瞬で消えることを期待するのは不自然でしょう。

なぜか腰痛や肩こりをはじめとした症状はすぐに治ってしまうと錯覚するのです。

また、病院以外の特に整体やカイロなどといった代替医療には奇跡的な結果を求めることが多くなる傾向にあります。

これは全く悪いことではありませんが、自然の法則から外れていることは間違い無いといえます。

痛みを喜ぶ人は稀です。早く解放されたい方の気持ちもわかります。

ただ痛みや凝りが出ているということは必ずその部位あるいは、そこに関係する部分に負担がかかっていることは必然です。

改善のスピードは人それぞれ。
だからこそ、科学的な根拠に基づいた技術とケア計画。それを支える哲学が欠かせないのです。

哲学への感謝と問いかけ

私は哲学に出会って、苦しかった自分が救われました。
同時に「治すことだけが全てではない」という喝を入れてもらったのです。

治療家の皆さんに問いかけたいのは、
「あなたの根底にある哲学は何ですか?」 ということ。

もし「治れば何でもいい」という考えがあなたの支えになっているのなら、それも一つの哲学かもしれません。
ですが、そこで一度立ち止まり、本当に大切なものは何かを見直してみてほしいのです。

関野 貴友

執筆者関野 貴友

1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。

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