正確にアプローチを定めるカイロプラクティック問診術

問診は、患者様との信頼関係の構築に大きな影響を与えます。その後の院のイメージ、リピート、紹介にも繋がりますので、一貫性を持って問診を行うことが必要不可欠になります。

問診で重要なことは、患者の話を聞くことに徹底する事になります。承認とねぎらいといった共感することで感情レベルでのつながりが作られることで、本当の患者様の深いレベルのニーズを聞くことが可能なります。患者様1人1人には、必ず先生に求めているものは異なります。

今回のコラムでは、問診の構成と正確にアプローチを定めるカイロプラクティック問診術を解説していきます。

(1)自己紹介とアイスブレイク

まず、初めて来院された患者様の多くは緊張していることがあります。そんな時は、最初から問診を始めるのではなく、アイスブレイクといった患者様の緊張を和らげるようなトークを意識しましょう。紹介者との関係、お仕事の内容、お住まいなど共感できる場所を探しながら自己紹介を行いましょう。

また、紹介者がいる場合は、紹介者にどのように紹介されたのかを聞き出すことや、ホームページを見て来院した患者様であれば、ホームページのどの部分を見て来院を決めたのかを聞くことで、院のイメージやホームページの改善のための重要な内容を収取することができます。

(2)来院理由

次に主訴の確認を行います。まず患者様との信頼関係を構築するために重要なのが、主訴についてのヒヤリングになります。実際に自分がその患者様の症状があると想像しながら、常に共感しながら聞くことが重要になります。

相手の話を親身になって聞いてあげることが何よりの信頼に繋がります。想像してみてください、たくさん仕事を抱えていて忙しそうな先生が、少ない時間でもしっかりと時間かけて話を聞いてくれて、常に優しく患者様に接してあげていたら良い印象を抱きますよね?

特にカイロプラクティックは、身体の全体像を意識してアプローチを定めていきます。必ずしも主訴の部分に原因が存在すると決めつけることはいけません。また、複数の主訴を抱えている患者様であれば、すべての症状を聞いているだけで時間ばかり過ぎてしまい、結果少ない情報しか収取できません。ここで重要なのが、しっかりと優先順位を決めて話を深堀していくことが重要になります。

(3)きっかけ&経緯

カイロプラクティックでは、筋骨格のバランスの乱れによって発症している問題なのか、自律神経のバランスの乱れや内分泌の乱れによって発症している問題なのかをしっかりと情報収集することで正確なアプローチを定めることが可能になります。

例えば、怪我や事故などの外傷が原因の場合は、筋骨格の問題、様々なストレスや環境の変化が原因の場合は、自律神経のバランスの乱れからの問題、内分泌が原因の場合は、ホルモンバランスの乱れと推測できます。

このように、問題がどこに存在しているかで、アプローチが異なってきますので非常に重要なヒヤリングの内容となります。

(4)現在の状態

現在の状態をヒヤリングすることの目的は、術者がしっかりと患者様の状態を把握することはもちろんですが、患者様に改めて自身の状態がどのような状態であるかをしっかりと認識して頂くことが重要になります。特に、慢性度合いを認識して頂くことで今後のケア計画の提案に大きく影響を与えます。

現在の状態の詳細を把握するために7つの項目でヒヤリングを行います。1つ1つの項目でのヒヤリングによって筋骨格の問題、自律神経の問題、内分泌の問題なのかをしっかりと区別することが可能になります。

『期間』

いつ頃から発症したのか?どのくらいの期間?または、今回が初めてなのか?といった現在の状態が急性/慢性の状態かを区別しましょう。

特に、慢性の状態であれば、具体的な期間を患者様の言葉で発言してもらうことが重要になります。幼少期、小中高校、大学生、社会人の時といった抽象的な表現ではなく、具体的な数字や年数を患者様の口から直接発言してもらうことで、改めて慢性度合いを認識してもらえることが可能になります。

問題が悪化するのにも時間が必要になるのと同じように、治癒する工程でも時間を必要としますので、このヒヤリング時にしっかりと問題がどのくらい慢性化しているかを自覚して頂くことで、今後のケア計画に影響を与えます。

『段階』&『頻度』

発症した時と比べると良くなっているのか、悪くなっているのか、それとも変化していないのか、どのくらいの頻度で発症するといった現在の状態を把握しましょう。発症した時と比べ改善に向かっているのであれば、自己の自然治癒力が悪化するスピードに勝っていることが考えられますし、反対に悪化している場合は、自己の治癒力が間に合っていない状態を言えます。

慢性化した筋骨格の問題であれば、痛みからしびれ、しびれから麻痺といた段階をへて悪化していく傾向が見られます。また、中枢から末梢へと患部から離れるように悪化する傾向が見られます。

自律神経や内分泌の問題であれば、季節の変わり目、気圧の変化といった環境の変化に大きく左右される傾向が見られます。また、女性の場合であれば、月経の周期といったホルモンバランスにも大きく左右されます。

『質感』&『範囲』

焼けるような痛みは、神経の問題、刺すような痛みは、神経/椎間板の問題、重だるい鈍痛は、筋肉/椎間板の問題、ピリピリ/チクチクするような痛みは、神経の問題、ドクドクする痛みは、血管の問題が推測されます。なるべく具体的に患者様自身の言葉で表現して頂くことが重要になります。

その質感の『範囲』を把握することも重要になります。筋骨格の問題であれば、神経支配範囲でのデルマトーム上の放散痛や感覚異常や運動機能の問題が確認されます。自律神経や内分泌の問題であれば、身体のあちこちに様々な痛みの質感が発症します。また、痛みが様々な場所に移動する傾向が見られます。

『姿勢』

緩和する姿勢や悪化する姿勢を把握することで、問題の原因を特定することが可能になります。例えば、座っている時、立っている時、寝ている時、歩いている時、立ち上がる時、かがんだ時といった様々な姿勢での疼痛の変化からどの部分に問題が生じているかをしっかりと把握しましょう。例えば、歩行時の腰部の痛みでは、仙腸関節の問題を疑います。しっかりと仙腸関節が左右対称に可動することで歩行時の衝撃を均等に吸収することが可能になります。歩行時の痛みは、仙腸関節に問題が生じることで、歩行時の衝撃を吸収することができずに痛みが生じると考えられます。

反対に歩行での腰部の痛みの緩和は、椎間板の問題を疑います。椎間板は、身体の深部に位置しているため血液循環による栄養補給が難しくなります。そのため歩行運動による仙腸関節の動きが椎間板の代謝を向上させます。よって歩行時での痛みの緩和は、椎間板の代謝が向上していることを意味しています。

『時間帯や季節による変化』

朝、昼、夜、平日、休日、週末、休み明け、季節の変わり目、悪天候などの環境の変化によって状態の変化についてヒヤリングを行います。

例えば、朝起きた時の頭痛(お昼前には解消される)または、週末や休日に起きる頭痛(長時間の睡眠後)は、化学物質(毒素)の蓄積による原因が考えられます。化学製品、農薬、食品添加物、合成洗剤、香料、アルコール等、このような体にとって有害な物質が蓄積されたときに体からのシグナルとして頭痛になる場合があります。

寝ている時に代謝が低下し、体の毒素が停滞することで頭痛が起こります。通常、人間の体はこれらの化学物質を甲状腺、副腎、肝臓、腸などの臓器によって解毒、排毒する機能を持ち備えています。が、サブラクセーションが起きることによってその機能が低下/亢進し、体の正常な機能が失われ頭痛が発症すると考えられます。甲状腺や副腎や消化器系といった排毒を促す臓器を支配している神経に対してアプローチしていきます。

このように、様々な環境の変化によって誘発する問題の原因をヒヤリング時にしっかりと情報収集することで、正確なアプローチを決定することが可能になります。

正確にアプローチを定めるカイロプラクティックにおけるアドバンス問診術を学ぶことで、次に行う検査の精度が高まり、問題の根本原因を特定することが可能になります。

執筆者塩川 雅士D.C.

1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。

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